インフラの最適化も必要
公共交通の乗り継ぎがしにくい(交通の結節点が弱い)点に対して、乗り継ぎ拠点(トランジットセンター)を設けた。トランジットセンターを設けることにより、バスの運行頻度が高まり、他のバス路線への乗り継ぎがしやすくなり、タクシー、自転車シェアなどの他のサービスも利用しやすくなり、地域の移動サービスを総動員させやすくなった。また案内スタッフ、乗換情報などを置き、会話や飲食をしながら楽しく待てるようにも工夫している。国土交通省はMaaSを視野に入れたバスターミナルを作る施策を進めており、湯沢のトランジットセンターは小さく簡易だが、ローカルバスタといっても申し分ない。
さらに、MaaSのスマホアプリやシステムを入れることが目的化しやすいことに対しては、思い切ってスマホアプリを作らず紙のチケットを販売することにしている。しかもシステム導入費用や乗務員の負担になるため、バス乗車券の車内販売もしない。MaaSの乗車券は2種類あり、バス乗り放題の乗車券と定額タクシー券だ。バスの乗り放題の乗車券の料金が、2日券500円、5日券1000円、1カ月券3000円で、定額タクシー券(エリア限定)が1週間券3000円、1カ月券8000円。
MaaSの実証実験では、利用者集めが大変だ。日本の観光MaaSとして先駆的な取り組みを行っている静岡県伊豆半島のMaaSでも2020年11月16日から2021年3月31日に行ったフェーズ3の実証実験でも販売枚数は3647枚だった。それにもかかわらず、約2か月でバス乗車券の発行枚数は約2万枚になると予測を立てている。
バス乗車券は、ホテル予約時に宿泊料金と利用者特典という形で吸収させ、地域住民も2日券、5日券、1カ月券も買おうかなと持っているなら乗ろうかなと思わせるような値付けや、地域住民や観光客が行きたいスーパーや観光施設の入り口の前に横付けする工夫をしていている。筆者は実証実験の開始日にバスに乗車したのでが、地域住民やホテル長期滞在者がどんどん乗り込んでくるので驚いた。
この湯沢版MaaSの仕組みは、熱海や石垣島、宮古島などの離島、温泉地、城下町などで横展開も可能だろう。
湯沢はスキーリゾートで有名で積雪が多い。雪の有無でサービスを変更していく必要がある地域だ。夏場の実証実験の後は、スキーリフト券などと組み合わせた湯沢冬版MaaSの登場など、MaaSに新しい風を吹き込んでくれることを期待している。
【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら