宇宙開発のボラティリティ

満身創痍のISSに降りかかる危険 宇宙ステーションの重大インシデント (3/3ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

宇宙ステーションにおける過去の事故

 世界に先駆けて宇宙ステーションの運用に挑戦し、多くの成果を上げてきた旧ソ連・ロシアではあるが、ISS以前から、とくに宇宙ステーション運用の黎明期には、こうしたロシアの機材トラブルは幾度も発生している。

 1971年、世界初のロシアの宇宙ステーション「サリュート1号」から宇宙船「ソユーズ11号」が地球へ帰還する際、極小のバルブが開放されたままの状態で大気圏へ突入したことにより、搭乗者3名が窒息死している。先述のソユーズMS-09もこれと同様な結果になる可能性があったわけだ。

 それに続く「サリュート7号」では、1985年、無人だった期間に機体が回転しはじめ、全システムが停止。これが同機体を投棄する遠因ともなった。

 また、「ミール」では1997年に火災が発生し、機体内にガスが充満。招へいされていたNASAのクルーを含む6名が消火に当たったが、NASAのクルーは後日、その際に装着した酸素マスクには「酸素が供給されなかった」とコメントしている。

経済難にあえぐロシアの重荷

 宇宙ステーションのシステムは複雑であり、一筋縄にはいかない。それを管理するのがいかに困難かは容易に想像できる。また、ステーションを維持するためのコストは巨額であり、経済難にあえぐロシアにとって、それが重くのしかかっている。

出版社の編集長を経て、著者兼フリー編集者へ。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍を手掛けつつ自らも執筆。自著に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』など。編集作品に『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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