試乗スケッチ

10年の時を経て…出力2倍のバッテリーで生まれ変わった新型「アクア」の実力 (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 停電時に嬉しい給電システムを装備

 給電システムを強化したこともトピックだろう。トヨタの他のハイブリッドモデルでも採用されている「非常時給電モード」(1500W対応の外部給電システム)を新たに組み込んだ形だが、それすらもEV感覚を強調する。災害での停電時やキャンプサイトで電力供給をこなすのはありがたい。

 そもそもアクアは、特に日本市場を意識したモデルとして成長してきた。法人需要も2~3割に達する。ユーザー層も広く、「社会人になったばかりの若者が購入したいクルマNo.1」にも輝いた。一方、リタイヤ層のクルマとしての支持率も高い。いわば「国民車」としての意味合いが強い。その点では、強烈な個性を打ち出しているのではなく、万人が好む、言葉を変えれば、「誰にもどこにも不満がない」ことが求められる資質である。

 10年間の“ジラシ”による買い替え需要も少なくないだろう。そのような「指名買い」に見事に応えてくれる実力を有している。没個性ではあるが、それこそが強烈な個性なのである。それを「安心感」と表現しても許されるに違いない。

 時を同じくして日産は、このコンパクト5ドアハッチバックのジャンルに「ノート」をリリースし、高い人気を得ている。搭載するパワーユニットは、エンジンを発電機としてのみ機能させるEV、「e-POWER」である。新型アクアは、そのノートとディメンションが酷似している。5ナンバーコンパクトハッチとしてライバル関係にあり、ノートがEV感を強調していることの対比が興味深い。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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