大変革期のモビリティ業界を読む

東京五輪で躍進…“自転車大国”日本の持続可能なまちづくりに期待 (2/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 実は日本は“自転車大国”

 欧州と比較すると、イメージでは日本の方が自転車に乗っていないようなイメージを持つのではないだろうか。実はその逆で、サイクリング・イン・ネザーランドによると、日本はオランダ、デンマークに次いで自転車を日常的に使っており、その後にドイツ、オーストリア、スイス、ベルギーなどの順なのだ。自動車を基幹産業として持ちながら、自転車も乗っている非常に珍しい国ともいえる。

 なぜ日本はこれほど自転車を日常的に使ってきたにもかかわらず、自転車のイメージがないのだろうか。その理由の一つは国や自治体が政策として、自転車を積極的に使ってこなかったからだ。

 日本初の「自転車活用推進計画」

 そんな日本であったが、2018年に「自転車活用推進計画」がはじめて誕生。2021年の今年、計画期間を2025年度とし第1次計画をもとに更新した「第2次自転車活用推進計画」が閣議決定された。

 日本の計画は次の6つの点を目標に掲げている。自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成、サイクルスポーツの振興などによる健康長寿社会の実現、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現、自転車事故のない安全で安心な社会の実現、多様な自転車の開発・普及、損害賠償責任保険などへの加入促進だ。

 日本人にとってあまりに身近であったから、欧州と比較すれば、日本の自転車の政策の盛り上がりのスピードは遅かった。自転車は乗っている間にまったくCO2の排出がなく、健康の効能もあり、スポーツや観光としても楽しめ、乗り続けていたら高齢になっても乗れる最も実用的な移動手段だ。今年の五輪を機に、通勤や通学以外の自転車のさまざまな楽しみ方が浸透し、自転車による持続可能なまちづくりが日本でも進められることを期待したい。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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