受験指導の現場から

今夏、大違いな過ごし方をした2人 最終学歴を左右する日常 (1/2ページ)

吉田克己
吉田克己

 夏期講習会期間が終わった翌日に本稿を書き始めたのであるが、振り返ってみれば、なぜか今夏は忙しかった。7月28日から8月28日までのあいだ、完全な休日は1日だけ、集団授業がなかった日は、その日を含めて3日間だけであった。

 コロナ禍の中でなぜ? と思われるかもしれないが―今夏は昨年と違い、夏期講習を控える家庭が少なかったようだ―我ながらよく凌げたものである(下肢がつったり強張ったりしたことは何度かあったが)。

青少年時代の記憶は一生もの

 なんでも聞くところによると、人生の長さを体感値で捉えると、折り返し地点は20歳そこそこだという。よく、年をとると1年が短く感じられるというが、その感覚はある意味正しいわけだ。ちなみに筆者は、この感覚をy=1/tの積分のアナロジーとして、「実感年齢、対数関数の法則」と勝手に解釈している。

 誰しも、社会人になってから10年、20年と経つと忘れてしまうのかもしれないが、じつは青少年時代は長いのである。本連載中に何度か、社会人になるまでのあいだに限れば、中・高受験は「ホップ」、大学受験(進学)が「ステップ」、就職が「ジャンプ」にあたると指摘したが、中学受験の数年前から就職するまでのあいだの記憶は一生ものなのだ。

 そこで今回であるが、この夏休みのあいだ、極端に異なる過ごし方をした2人の中学生を取り上げたい。登場するのはともに、私立中学に通う中学2年生である。

中学生Aの夏休み コロナ禍の弊害?

 元塾生(小学生)が受験に成功すると、何年かしてその弟妹が入塾してくることはよくある。そういうとき、「お兄ちゃんは元気にしてる?」と聞くことも多い。

 今夏の場合、小6のときに担当していた現・中2生の弟(小5)がいるクラスを春期に続いて受け持つことになり、改めて聞いてみた。「兄貴は元気にしてる?」と。そのときのやり取りが以下である。

「1日に10時間くらい、ゲームばっかりやってる」

「1日10時間って、寝てるか食べてるか風呂入っているとき以外は、ゲームしかしてないってこと?」

「そう、コロナでどこにも行けないから、1日じゅうずっと家にいて、ゲームばっかり。トイレにもゲームを持って入ってる。前に赤点をとって、お父さんにゲームを取り上げられてたんだけど、期末試験で赤点がなかったからゲームを取り返して、それからゲームばっかり」

「それでお父さんは?」

「このあいだお父さんがキレて、次の試験で赤点があったら、またゲームを取り上げる約束をしてた」

 もともと小6のときからゲーム好きな生徒ではあったのだが、コロナの影響も少なからずあるとは言え、「なかには(やはり)こんな影響の出かたもあるんだな…」と改めて認識した―と同時に、「他人事ではないな」と。

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