まさかの法的トラブル処方箋

“オワコン”? 高齢化が進む日本社会にとって重要な「遺留分」について考える (1/2ページ)

上野晃
上野晃

 「遺留分」の趣旨とは

 遺留分ってご存じでしょうか。例えばある人、Aさんとしておきましょう。このAさんが遺言を書き残して他界したとします。Aさんは長女に全財産を与えたいと思っています。遺言の内容もそういったものでした。その後、Aさんが他界し、遺言が開示されました。遺言はAさんに全財産を相続させるとあります。これにはもう一人の相続人である次女Bさんが大いに不満です。Aさんは全財産を相続できるでしょうか?

 正解は、「できない」です。なぜならBさんには遺留分があるからです。Bさんが遺留分を求めない場合はともかく、遺留分を希望する以上、AさんはBさんに遺留分を支払わなければなりません。遺留分の額は、法定相続分の2分の1になります。AさんとBさんの2人だけが相続人の場合、Bさんの遺留分は4分の1になります。

 つまり、遺言者は誰かに全財産を残したいと思っても、他の相続人の遺留分を侵害してまで自分の意向を貫くことができないのです。なぜそのような制度が設けられたのでしょう。

 明治から昭和にかけて、男親が一家の大黒柱として大家族を養っていました。財産は男親に集中し、彼の一存で家族の人生は大きく左右されもしました。

 例えば彼が、愛人に全財産を残すという遺言を書き残したとしましょう。もし遺留分がなければ、こうした遺言通りに愛人が全財産を取得することになってしまい、残された一家は路頭に迷ってしまいます。ましてや平均寿命が今よりもっと低かった時代です。残された子供たちも当然まだ年若い状況が多くありました。そうした子らの生活保障という意味合いも遺留分には多分に存在したのです。

 こうした意味合いに加えて、戦後の平等思想の下、相続も平等になされるべきという考えが推し進められました。遺留分はそうした平等思想にもマッチするものでした。

 ところで、この遺留分制度ですが、近年、法改正がなされています。相続財産に例えば不動産があった場合、それまでは遺留分請求をしたら、不動産の持分を取得することもあり得たのですが、改正後は遺留分権利者が取得するのはすべて金銭によることとなったのです。これによって、不動産が相続するたびに持分で細分化されてしまうのを防止しようとしたのです。

 遺留分制度の問題点

 上述のとおり、遺留分制度には「相続人の生活保障」という側面と「相続人間の平等」という側面があります。

 相続人の生活保障についてみると、昔と現代とは随分状況は違ってきています。一番大きい違いは寿命でしょう。厚生労働省の調べによると、現代の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳だそうです。だとすれば相続発生時、相続人である子供たちは中高年になっているのです。

 生活保障は必要でしょうか。もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではないと思います。まだ幼い子がいるということだってあるでしょう。しかし、原則的な視点で言えば、生活保障という趣旨はもはや意味を失っているのではないでしょうか。

 では、平等という観点はどうでしょう。これは決して意味を失っているわけではありません。しかし、今日、過剰な平等主義がかえって歪な結果を発生させていることも多々あります。それは相続の分野でも言えることで、例えば、献身的に介護をしてきた長女夫婦に多くの財産を残したいと思っても、見舞いにすら来なかった次女や三女に遺留分を与えないといけないなど、現場を見ている身として、極めて不条理だと感じることの方が多くなってきています。

 果たして、真の平等とは何でしょう。結果の平等というのは、どこまで考慮したら良いのでしょう。今の遺留分制度は結果の平等に重点を置き過ぎてやしないか、そんな疑問があります。

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