宇宙開発のボラティリティ

激増する各国ロケット打ち上げ回数 あまり報道されない失敗・墜落も (3/3ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

▼2020年9月7日 中国国家航天局(CNSA)「長征4号B」

 中国が多用する人工衛星用のロケット「長征4号B」は全長45.6m、三段式の液体燃料ロケットである。2020年9月には地球観測衛星「Gaofen-11 02」を搭載し、そのモデルの通算345回目の打ち上げが行われた。

 中国の山西省にある太原衛星発射センターから打ち上げられた長征4号Bは、発射から間もなくして第一段が陝西省の学校の近くに墜落。現場にはオレンジ色の煙が立ち込めた。衛星追跡サイトを見ると、ペイロードであるGaofen-11 02は高度490kmの極軌道へ投入されたことが確認できる。

 中国のロケット発射場は、かつて防衛上の観点から内陸部に作られた。そのため、こうしたロケットの打ち上げ失敗によって民家などが被害を受ける事故が相次いでいる。

 急速に打ち上げ回数を増やす中国では、これ以前の7月10日にも新開発ロケット「快舟十一号」が初打ち上げに失敗しており、さらに同年4月10日には「長征3号B」が、インドネシアの人工衛星「Palapa N1」の軌道投入に失敗。第3段に発生したトラブルにより、ロケットは衛星とともに大気圏に落下している。宇宙大国を目指すものの、ロケットの打ち上げ精度は、欧米や日本にはまだ追いついていない。

打ち上げが急増する以後10年 問われる安全性と宇宙マナー

 大陸間弾道ミサイルから発展したロケットは、かつては米ソとその軍需産業によって推進される国家プロジェクトだった。しかし、2000年代に入ってその門戸が本格的に開放されたことにより、ベンチャーをはじめとした多くの民間企業が宇宙産業に参入できるようになった。

 ロケットの打ち上げ回数が増えれば、それに関連するトラブルや事故も増加する可能性が大きい。あまり大きく報道されないが、宇宙先進国であるはずのアメリカにおいても、そうした出来事がすでに散見される状況だ。

 日本を含む欧米諸国と、ロシア、中国などは、これからの10年間で宇宙ステーションを完成させ、月面基地の建設にも着手する予定だ。ロケットの打ち上げ回数はさらに増えるだろう。宇宙という国際サロンを正しく活用するには、スペース・デブリへの対処を含め、より厳格な運用管理と法整備が必要となるに違いない。

出版社の編集長を経て、著者兼フリー編集者へ。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍を手掛けつつ自らも執筆。自著に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』など。編集作品に『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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