ヘルスケア

インフルエンザと新型コロナ、同時流行の可能性や接種の間隔は? (1/2ページ)

 新型コロナウイルス感染「第6波」への備えが求められる中、冬場の流行を見据えたインフルエンザの予防接種が始まった。ただ、今シーズンはコロナ禍でインフルワクチンの供給に遅れが生じ、医療現場に影響が出ているという。インフル患者は年間1千万人を超えることも珍しくないが、昨年は約1万4千人と激減。懸念されたコロナとの同時流行は杞憂(きゆう)に終わった。なぜインフルの感染者は激減したのか。今季は一転して同時流行する可能性はあるのか。専門家に聞いた。

 ワクチン供給遅れ

 厚生労働省によると、インフルワクチンの今シーズンの供給見込み量は、例年と同程度の2567万~2792万本。だが、供給は昨季よりも遅れる見通しになっている。コロナ流行により、ワクチン製造用の資材が世界的に不足しているためだ。

 影響はすでに各地の医療機関に及んでいる。大阪市阿倍野区の「潮見クリニック」では供給遅れを受け、接種の開始時期を例年の10月から1カ月先送りした。ワクチンの一部はすでに届いているが、潮見満雄院長(65)は「供給が約3割減ると聞いており、十分な量がいつ届くかも見通しが立たない」と話す。

 例年約300人が接種する同クリニックでは、供給量が安定するまでは接種の必要性が高い人らを優先する。潮見院長は「人数や時期を調整しながら進めるしかない」と打ち明けた。

 「例年なら9月中旬には一定量の供給があるが、今年は月末になってようやく少量が届いた」。大阪市内にある別のクリニックの男性医師(53)も頭を悩ませる。年内に接種を希望する人が多いといい、「混乱が生じないか心配だ」。

 昨季は流行せず

 昨シーズンはコロナとの同時流行が懸念されたことから、例年を大きく上回る3342万本のインフルワクチンが国内で供給された。ただ厚労省によると、推計患者数は約1・4万人。約1458万人に上った平成29~30年シーズンのわずか0・1%にとどまった。厚労省が現行方法で調査を始めた平成12年以降、「流行なし」だったシーズンは初めてという。

 理由については、海外との行き来の減少のほか、コロナ流行でウイルス同士が干渉したとの説もあるが、明確には分かっていない。一方で、コロナ陽性を判定するPCR検査が、インフルを含む他のウイルスまで検知してしまい、結果的にインフル患者が減ったとの見方もある。だが、これについて厚労省は「コロナかそれ以外のウイルスかどうかは、PCRでほぼ判別できる仕組みになっている」との認識を示している。

 愛知県立大の清水宣明教授(感染制御学)は「コロナ対策により、インフルの流行を防ぐことができたと考えている」と話す。マスク着用や換気、手指の消毒の徹底といった基本的なコロナ対策が「結果的にインフルには効果があったのだろう」。

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