地球の樹木3兆本、従来推定の8倍あった 21世紀から年間150億本喪失
地球上には約3兆本の樹木があり、従来の推定より8倍も多い「驚くべき」本数であることが分かった。一方で、21世紀に入ってから毎年平均150億本の樹木が失われていることも明らかになった。
米エール大学などの国際研究チームが調査結果をまとめ、9月3日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載したもので、京都議定書に代わる地球温暖化対策の新しい枠組みを決めるパリでの国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)開催が3カ月後に迫る中、森林破壊阻止と再生に向けた取り組みの重要性を訴えた。
従来推計の8倍
この調査は米独など世界15カ国の研究者によるチームが実施した。樹木を「地面から1.3メートルの高さの位置で、幹の直径が10センチ以上ある植物」と定義づけ、南極大陸を除く全世界の約40万カ所(総面積43万ヘクタール)で実際に測定した樹木の密度と、精密な衛星写真を解析。さらにスーパーコンピューターの最先端技術を組み合わせて、地球上に存在する樹木の数をほぼ正確に把握した。
その結果、主に衛星写真に頼った従来の推計では約4000億本とされた樹木数は、実際には3兆400億本もあることが分かった。
AFP通信などによると、研究チームを率いたエール大学元教授で現在はオランダ・バーヘニンゲンの環境学研究所に所属するトーマス・クラウザー氏は「思いもよらなかったことだが、数兆本レベルに達していることが分かって本当に驚いた。従来の推計値を修正できたことは意義深く、新たに算出された3兆400億という数字と今回確立された算出方法は、今後の環境政策の指針を定めるベースになる」と話している。
密度高い北方
樹木密度が最も高い地域は北米やスカンジナビア半島、ロシアの北方にある森林地帯で、全世界の樹木の24%に当たる7500億本が自生。次いで、赤道をまたぐ熱帯・亜熱帯地域に全体の43%の1兆3000億本、22%の6600億本が温帯地域にあることが分かった。
また、研究チームは、気候、地形、植生、土壌、人為的行動などの影響因子が、自生数や樹木密度にどのようにかかわっているかも解析。人類史上、農業が始まった約1万2000年前と比べると、地球上の樹木はすでに46%が消滅し、その減少ペースは加速を続け、21世紀に入ってからは毎年約150億本ずつ失われていると結論づけた。
地球温暖化の防止には、温室効果ガス、中でも温暖化への影響が最も大きいとされる二酸化炭素の大気中の濃度を増加させないことが重要で、森林がその吸収源として大きな役割を果たしている。京都議定書での日本の温室効果ガス排出量削減目標6%のうち、3.8%は森林による吸収量で達成する計画になっていたほどだ。
気候や健康に影響
クラウザー氏は「人類は地球上の樹木をほぼ半減させてしまった。その結果が、気候や人間の健康に大きな影響を及ぼしていることは疑う余地がない。健全な森林を取り戻すには多大な努力が必要で、森林再生に向けた取り組みを全世界で強化しなくてはならない」と訴えている。
現在、ドイツのボンでは、11月30日からパリで開かれるCOP21(12月11日まで)に向けて、下準備の特別作業部会が開催中だ。
だが、温室ガス削減についての法的拘束力や先進国と発展途上国の責任の差などについて、各国の主張は大きく異なったままで、最終合意の形は全く見えていない。3兆400億本も現在の減少ペースでは、あと200年で尽きてしまうのにだ。(SANKEI EXPRESS)
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