「ありがとう」カシオペア、札幌へ最後の旅路

 
寝台特急「カシオペア」下り最終列車の発車前、廃止を惜しみ記念写真を撮影する乗客や鉄道ファンの姿が絶えなかった=2016年3月19日午後、東京都台東区のJR上野駅(三尾郁恵撮影)

 26日の北海道新幹線開業に伴い廃止される寝台特急「カシオペア」(上野-札幌)の下り最終列車が19日午後4時20分、上野駅を出発した。13番ホームには鉄道ファンら約2000人が集まり、野木肇雄駅長の合図の後、銀色の車両が汽笛を鳴らし、北へ向かって進み始めると「ありがとう」と次々に声が上がった。

 新幹線に代わりはできない

 JR東日本によると、20日午前11時15分に札幌に到着予定で、20日午後に札幌を出る折り返しの上りがラストランとなる。北斗星(上野-札幌)やトワイライトエクスプレス(大阪-札幌)も昨年引退しており、本州と北海道を結ぶ寝台特急は、時刻表から姿を消す。

 大阪市都島区の公務員、稲田明利さん(48)は、鉄道ファンの仲間10人で乗車。「朝焼けを見ながら目的地に思いをはせ、乗り合わせた人とも交流できる素晴らしい乗り物だった。新幹線に代わりはできない」と残念そう。「札幌駅で列車を見送ったら、きっと泣いてしまうだろう」と感慨深げに話した。

 見送りに訪れた神奈川県大和市の主婦、姫宮有希さん(39)は、12年前に新婚旅行で利用したといい「3歳と1歳の娘たちがもう少し大きくなったら、家族で乗りたいと思っていたんだけど…」と名残を惜しんでいた。

 カシオペアは1999年7月にデビューし、週3回程度往復してきた臨時列車。客車は12両で、定員は174人。

 JR東は6月以降、北海道に向かうツアーのための団体列車として復活させる方針で、カシオペアの名称も存続する見通しだ。

 カシオペアの廃止により、かつて全国各地を結んだ寝台特急も残すは「サンライズ瀬戸・出雲」(東京-高松・出雲市)だけとなる。

 鉄道博物館(さいたま市)によると、特急が初めて走ったのは12年。新橋-下関間を走る夜行列車で、寝台車だけでなく座席車もあった。58年に青色の車両で統一され、「ブルートレイン」第1号となった「あさかぜ」(東京-博多)も、しばらくは座席車が連結されていた。

 今後は豪華寝台が主流に

 初めて座席車なしで編成されたのは、65年の「富士」(東京-大分)。寝台車以外は、食堂車しか連結していなかった。

 寝台特急は75年3月、定期列車だけで38往復運行され、全盛期を迎える。「飛行機がまだ特別な存在で、寝ている間に長距離移動ができてビジネスに有効だった」と鉄道博物館の宮田健・営業部担当部長は話す。

 ただ、国鉄(当時)による値上げで航空運賃との差が小さくなったうえ、新幹線網が拡大。さらに割安な夜行高速バスの普及もあり、寝台特急の利用者が減少し、廃止が続いた。観光での利用者が多い北斗星やトワイライトエクスプレスも、2015年に廃止された。

 一方で、豪華寝台列車が今後の主流となりそうだ。JR九州は13年、「ななつ星 in 九州」を投入、高い人気を維持している。17年春には、JR東日本の「トランスイート四季島(しきしま)」、JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」がデビューする予定だ。(SANKEI EXPRESS