其の九 前を向いて生き抜く人々

井浦新 アジアハイウェイを行く
首都北京市で、秋葉原の日本人のように踊る若者=2015年9月19日、中国(井浦新さん撮影)

 ≪問題抱えつつ明るく、たくましく≫

 総延長13万キロにも及ぶアジアハイウェイは、アジア32カ国をつなぐ経済や文化の大動脈。NHK・BSプレミアム「井浦新 アジアハイウェイを行く」の旅の中で、俳優・クリエイターの井浦新さんは、それぞれの国でさまざまな課題と向き合う人々に出会った。

 急速な経済成長の中で生じた格差。田舎から都会へ働きに出た人々は、発展を遂げるタイの大都市の片隅で、生活になじめないことへの悩みを抱えていた。

 ベトナム戦争の傷跡がいまだ癒やされず、苦悩する人々。韓国では、悲痛な事故による過去の記憶を引きずったまま、どのように先に進んでよいかわからず、心を痛める人々に出会った。

 また、政策の変更で、豊かになった生活とは裏腹に、満たされぬ心のギャップを抱え込んでしまった人々もいた。一方で、「一人っ子政策」のもと、なに不自由なく育てられ、のびのびとした中国の若者たちの姿は対照的だった。

 この旅で、井浦さんは現代のアジアの国々の「素顔」に触れようとした。一口にアジアの国々といっても、経済、歴史、政治などを背景に固有の問題を抱えており、それでも多宗教、多民族の中で折り合いをつけながら、明るく、たくましく、前を向いて生き抜く人々の姿を見て、感動することも多かった。

 ときには、過去の出来事にとらわれ、今が見えなくなっている人に、「強く生きてほしい」と語りかけたこともあったそうだ。この体当たりの旅のなかで、井浦さんのなかに、伝える使命と覚悟のようなものが育っていったという。

 これまで紹介してきた井浦さんのアジアハイウェイの旅が書籍化され、今春発売される。(EX編集部/撮影:俳優・クリエイター 井浦新(あらた)/SANKEI EXPRESS