アゼルバイジャンからイランへと抜ける国境のアスタラ検問所。休憩所兼食堂で、トラックの運転手たちが卵料理を頼み、パンとお茶を飲んでいた。「トマトソースを炒めて、そこに卵を割って入れたスクランブルエッグが最高に美味(おい)しくて」。羊肉に疲れていた井浦(いうら)さんの胃袋にやさしい朝食。「イランは絶対いい旅になると思った」と旅への予感を語る。
荷物を積んだトラックが行き交い、バザールで日用品を大量に買い込んだ人たちが、アゼルバイジャンへと続く歩行者専用通路に並ぶ。「ここは世界中から経済制裁を受けている国なのだろうか。イメージとのギャップにまず驚きました」
イランの国教であるイスラム教シーア派は、イスラム諸派の中でも、比較的穏健ともいわれる。定期的に聴こえてくる、祈りの時間を告げるアザーン。のびやかなリズムが、慌ただしい日常に落ち着きを与えてくれる。「どんなに忙しくても人々は祈りをささげる。生活のリズムが時計ではなく、アザーンで刻まれることの魅力に気がつきました」