【取材最前線】
「メガFTA(自由貿易協定)の時代に入った」。通商交渉を担うある政府高官はこう強調する。日本の交渉参加が決まった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をはじめ、日中韓3カ国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などの東アジア包括的経済連携(RCEP)、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)、米国とEUのFTAなど、広域の経済連携を目指す動きが一気に加速しているからだ。
英国・北アイルランドで開かれ、6月18日に閉幕した主要国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)も首脳宣言でTPP、米EUのFTA、日EUのEPAを列挙し、「可能な限り速やかにすべての協定の完結を目指す」と明記した。
日米欧の3極が自由貿易圏の構築に動く背景には、150以上の国・地域が加盟する世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が暗礁に乗り上げていることがある。先進国は経済成長の原動力として貿易自由化への取り組みを重視するが、新興国と途上国は市場開放に消極的で、対立が続いている。