亀崎さんらのモットーは「簡単でおいしい」だ。母親の立場に立ってレシピを考案した。それはすべて、アレルギー物質を完全に排除しながら、身近に手に入る米粉や豆乳などをうまく使い、特別な調理手順も踏むことなく作ることができる。患者とその家族から「患者だけでなく、誰が食べてもおいしい」と好評を得ており、書籍化することになった。102点のごはんとおやつのレシピのほか、学校給食の事故で注目を集めた激しいアレルギー反応「アナフィラキシー」などもわかりやすく解説している。
レシピ本の端書きには、多くの子供の場合、食物アレルギーは成長するにつれて治っていくと書かれている。そのうえで、亀崎さんは次のようにつづっている。
「人生のはじめの少しのあいだ、お母さんが安全なものを選んで、工夫して、おいしい食事を自分のためだけに作ってくれるなんて、子どもたちにとってはどんなに豊かで贅沢(ぜいたく)な経験だろうと思います」
不便でつらい状況も、見方を変えれば豊かな時間になる。専門家の語る言葉は、不安に駆られるお母さんたちの心に頼もしく響くだろう。
(佐々木詩/SANKEI EXPRESS)