ウェールズ氏が怒るのには理由がある。ウィキペディアは一般ユーザーの自発的な書き込みによってネット上の無料辞典を運営しているが、中国国内のユーザーが何を書き込み、閲覧したかといった情報を中国当局が把握できないよう、暗号化を試みた。ところが、中国政府による民主化運動の武力弾圧「天安門事件」の記念日(6月4日)前後から、“暗号化版ウィキペディア”が閲覧不能になった。
検閲可能な“非暗号化版”は閲覧できるが「天安門事件」といった、当局に不都合な政治的内容は閲覧できないままだ。
さらにウェールズ氏は、中国政府が昨年12月、インターネット事業者に、ユーザーの実名やメールアドレスなどの個人情報の提供を要求した件についても「要求には応じない」と怒りをあらわにした。
ビジネスと割り切り
中国当局に対してこうした強い姿勢をとれるのは、ウィキペディアが有志の寄付で運営している非営利団体という性格が大きい。営利を追求するグーグルやヤフーではそういうわけにいかない。当局を敵に回せば、超巨大市場の中国でビジネスができなくなるからだ。