まず、家に帰ると、部屋に掛けている絵画の位置が変わっているとか、灰皿に身に覚えのない吸い殻があるとかいう実害のない警告だ。それでも外交官が行動を改めない場合、冷蔵庫のコンセントを抜く、車をパンクさせるなど、若干の実害がある警告になる。
それでも外交官が、ロシア当局にとって不愉快な行動を取っていると、もう少しレベルの高い警告に切り替わる。ウィーン条約で外交官の身体、住宅は厳重に保護されている。それであってもロシアの秘密警察は、必要になれば、外交官を殴るくらいの警告は平気で与える。筆者も外交官時代、交通警官を装った秘密警察関係者に殴られたことがあるので、このことは皮膚感覚でよくわかる。
もっとも北方領土問題で、筆者がロシア当局を刺激するロビー活動を行い、当局の警告を無視していたので、殴られる理由はあったが。
仮に同性愛者の人権擁護に反対するロシアの右翼勢力がこの襲撃を行ったとするならば、オランダ外交官にけがをさせ、かつ室内を本格的に破壊したと思う。抑制された暴力を行使できるのは、暴漢が「その道の専門家」だからだ。