ジャズというジャンルには、ある種のイメージがあるだろう。ムーディーな4ビートのリズム、激しいアドリブの応酬、ビッグバンドによる優雅なスイングなどなど。でも、近年はさらにジャズの解釈の拡大化が進み、「これもジャズなの?」と思ってしまう面白いアーティストが第一線で活躍している。
R&B、ヒップホップ
ロバート・グラスパーは、そういったボーダーレスなジャズマンの最先端だ。ゴスペルやソウルなど多くの音楽から得たエッセンスを取り入れた上で、高度なテクニックを持ち、繊細なフレーズから大胆なアドリブまで弾きこなせるピアニスト。しかし、エクスペリメント名義の作品は、R&Bやヒップホップのアーティストが多数参加しており、なんの前情報もなければピアニストのリーダーアルバムとは思えないほど彼のプレーは控えめだ。昨年発表し、グラミー賞のベストR&Bアルバムを受賞した「ブラック・レディオ」の続編である「ブラック・レディオ2」も、そのスタイルは継続。コモン、ジル・スコット、スヌープ・ドッグ、ノラ・ジョーンズなど目まいがするほど豪華なゲストを迎え、ボーカルとラップがジャズトラックの上で躍動するが、屋台骨となるサウンドはやはりピアノ。華やかながらも一定のクールなトーンを保っているのは、やはりグラスパーにしか成し得ない技なのだ。