今年は「スカパー!IDEHA賞」の審査員だったので、審査対象である日本作品を主に見ながらコンペ作品の会場へも足を運んだ。TVドキュメンタリーとは一線を画し、場面を盛り上げる過度な音楽や幼稚なナレーションを排した映像は力強かった。強烈に惹かれた作品はインターナショナル・コンペティション部門に出品されたサラ・ポーリー監督「物語る私たち」(カナダ/2012年)。ポーリー監督は女優から監督に転身し、すでに劇映画「アウェイ・フローム・ハー 君を想う」(06年)、「テイク・ディス・ワルツ」(11年)で高い評価を受けている。
知性と勇気に出会う
今回「物語る私たち」をみて、フィクション映画に投影された彼女の映像制作のモチベーションを垣間見る思いがした。監督自身と親戚や友人たちが監督のご両親の過去や監督の出生の秘密について語っていく。ありのままの人間関係をさぐる映画をつくろうとする娘のために監督の父親がナレーションを務める。録音スタジオで父に指示を出す監督。父の語りはやがて周囲の人々の証言と重なり、今は亡き監督の母の秘められた過去、監督の実父の存在が明らかになっていく。