スクリーンに映し出される家族の過去の貴重な写真や映像たちは、ポーリー監督の指示のもと、家族に似せた俳優たちによってこの映画のために撮られたイメージだと明かされる。現在と過去の映像が事実と虚構を掻き混ぜ赤裸々な言葉をまとう。優しく実直な家族が浮き彫りになるプロセスは嘘と真実を結びつけ、監督の才能と勇気に劣らず大きく深いこの家族の愛をスクリーンから滲(にじ)ませる。その愛を一身に受けた監督は、亡き母の奔放な生き方と母を愛した2人の父の人生をひもといていく。
細部に至るきめ細やかな演出に感嘆しながら、一見クールビューティーなポーリー監督と家族の間の感情の渦を想像し涙が止まらなかった。目まいがするほどスリリングで挑発的かつ官能的で愛に満ちあふれた作品たちが、各会場で上映される1週間。それは人生の悲哀と歓喜に満ちた個人史が詰まった歴史の流れを感じさせてくれた。間違いなく「国宝」と言える映画祭! ますます多くの観客が世界から集まる知性と勇気に山形で出会ってほしいと願う。2年後、また母校を訪ねるのが今から楽しみだ。(映画監督 ヤン・ヨンヒ/SANKEI EXPRESS)
■ヤン・ヨンヒ(梁英姫) 1964年、大阪市生まれ。在日コリアン2世。映画監督。最新作「かぞくのくに」は第62回ベルリン国際映画祭で国際アートシアター連盟賞を受賞。他に監督作「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」がある。