「人間が苦手」
このクレアという女の奇妙さが、物語の前半を支える軸になっている。僕はこの女の正体が知りたくて、どんどん作品の世界にのめり込んでいった。年老いた尊大な鑑定士と決して姿を現さない若い女の依頼人。一見かけ離れている者同士に思えるのだが、この2人には共通しているものがある。それは「人間が苦手」ということだ。屋敷の部屋に10年以上籠もっているクレアは言わずもがな、鑑定士のヴァージルも友人もいず、結婚もしてない。何よりも彼の最大の楽しみが、自宅の隠し部屋の壁一面に飾った、女性の肖像画をめでることであることからも、彼が極端に人を忌避していることがうかがえる。
全てが衝撃への伏線
物語の後半、そんな似たもの同士の2人が徐々に自分の殻を破り、お互いの心を歩み寄らせていくさまは、とても切なくて美しいラブストーリーだ。観客の好奇心をくすぐる奇妙な状況、そのなかで切ないまでの人間のリアリティーを描く。