通貨の交換レートをみると、円はドルに対して20%弱、ユーロに対して23%それぞれ下落した。「通貨の交換レートはそれぞれの通貨のMBの発行規模に左右される」という著名投資家、ジョージ・ソロス氏の卓見通りである。中央銀行がお札をより多く刷ると、自国通貨相場を安い方向に誘導できるのだから、欧米などには、日本がアベノミクスで「通貨戦争」を仕掛けているとの警戒論が根強い。
しかし、2008年9月のリーマン・ショック当時と現在を比較すると、FRBはMBを4倍以上に増やし、日銀の2.1倍をはるかにしのぐ。その点、ECBは35%増とささやかに見えるが、12年7月には08年9月比で2倍弱までMBを増やし、日銀の40%増を圧倒。ユーロは1ユーロ=95円台まで下がった。現在の140円前後の水準とは隔世の感がある。通貨安政策は欧米が日本に先行したわけで、遅れて量的緩和する日本が非難される言われはない。
ユーロ圏は、インフレを警戒するドイツなど「北」と、デフレ圧力に悩む「南」に分かれている。ギリシャはデフレ不況に陥っているし、イタリア、スペインなど他の南欧もデフレ懸念が強まっている。ECBは、一体的な通貨発行政策を打ち出せないでいる。