円安による輸出てこ入れ効果がほとんど出ていないのも気になる。貿易を量で見ると、輸出は東日本大震災後、一貫して下がり続けている。輸入量は10年初めから増加基調にあり、アベノミクス開始後は伸びが止まったものの、横ばい状態にある。
リーマン後、さらに東日本大震災後の超円高局面で、日本企業は海外生産拠点を増強し、そこからの部品・完成品の輸入を増やしている。日本企業は超円高に適応するために、それまでの日本からの輸出主導型から日本への輸入主導型へとビジネスモデルを切り替えた。その超円高が多少是正されたところで、企業の海外生産重視の投資策は依然、変わらない。
お札を刷って円安に誘導すれば、確かに株価は上がるが、日本の生産や雇用増進をもたらす輸出の増加はいまだに実現していないのが実情だ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)