やるせない母の背中
仕事が続かず不満ばかり漏らすアランに意見する母。ガタイの大きな息子が、老いと病気で小さくなった母に罵声(ばせい)を浴びせながら食って掛かる。「死んじまえ! 反吐(へど)が出る!」と乱暴に責めよる息子の前で震える母の姿が痛々しい。同じようにこの母を苦しめたであろう亡き父の影さえ感じさせる圧巻のシーンだ。ボウリング場での出会いからアランに心も体も開く魅力的な女性クレメンス(エマニュエル・セニエ)は壁をつくるアランに「あなたはすべてを壊してしまうのね」と言って去る。母と息子の長年の友人であるラルエット(オリヴィエ・ペリエ)は親子を見守り優しく接する。死ぬためにスイスへと旅立つイヴェットに「あなたの隣人で幸せだった」と言い頬にキスをする。その腕に一瞬すがりそうになる母の背中がやるせない。脇を固める役者陣の演技もため息が漏れるほど素晴らしい。
母がスイスへと旅立つ。アランが母を送り届ける。あまりにも淡々と流れる時間。そして最後に母と息子が交わす言葉は…。