去る者日々に疎し、といって、死んだ者は次第に忘れられ、ついには完全に消滅する。ところが、ここで描かれる男女であり、夫婦である生者と死者は互いのことを忘れない。というか逆に、日を重ねるにつれ、その現れが頻繁になり、復活、のぎりぎりのところにまでいたる。これは、本来は脳の奥底に沈んでアクセスできなくなる記憶の愛による再生であり、復活へ向けた祈りであろう。そろそろ過ぎたことは忘れて前を向いて生きていこう。なんて言うが、終末にいたって、或いは、人間が死ぬるとき、もし祈りによって時間を閉じることができるのであれば前も後ろもないはず、と思おうと思って思う。そんなすがすがしさを感じる本だったわよ。
気合と気迫の殴打
といって話は変わるが、松浦寿輝の『詩の波 詩の岸辺』がおもしろかった。読み狂人はかねてより、いろんな詩人がいろんなタイプの詩を書いているのにもかかわらず、なにかそこに共通した、悲しい感じ、があるのを感じ、なぜだろうと思っていたのだけれども、前半の、「現代詩-その自由と困難」その他を読んでそのあたりの事情がよくわかった。