女性と男性が路上で一緒にいることすらはばかられるこの国の社会で、撮影することはさぞ難儀だったに違いない。マンスール監督は「基本的に女性と男性は“隔離”されているんです。だから私は路上撮影では近くに止めたバンの中に隠れて、モニターを見ながら無線で『今の気持ちをキープして』『もっと画面をワイドに撮って』と俳優やスタッフに指示していたんですよ」と明かし、フラストレーションのたまった日々を振り返り渋い表情を浮かべた。
室内であっても1対1で男性記者の取材を受けたとなれば、どんな後ろ指を指されるか分かったものではないし、血縁ではない若い男女が外でデートすることなど絶対にあり得ないことで、そんなことをすれば「宗教警察が飛んできて罰せられてしまいますよ」と、マンスール監督は目を丸くした。
ただ、中東で吹き荒れた「アラブの春」でも一役買ったインターネットの存在が、サウジアラビアに少しずつ価値観の変化をもたらすのではないかとも思う。「たとえば若いカップルの間ではスカイプが男女の恋愛の大切なツールとされています。インターネットが社会に与える力はすごい。もちろん私も伝統文化を大切にしてはいますが、インターネットがどんな影響を与えるのか、興味深く見守っています」。公開中。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS)