世界中で数多く開催されている自転車ロードレース。どのレースもそれぞれ特色があるが、なかでも4月中旬にフランス、ブルターニュ地方で開催される「トロ・ブロ・レオン」は強烈な個性を放っている。
ヨーロッパのレースシーズンは2月頃から始まり、3月になると北フランスやベルギーなどで「クラシックレース」と呼ばれる1世紀以上の歴史をもつ伝統的なレースが続き、春の訪れとともに本格的なシーズンを迎える。クラシックレースの多くは、伝統のもとに今でも荒れた石畳がコースに組み込まれ、いずれのレースも非常に過酷なものとなるが、「トロ・ブロ・レオン」は、石畳ではなく「セクター」と呼ばれる未舗装の農道をつないで、選手たちはゴールを目指す。自転車ロードレースは舗装路で開催されるものであり、このような未舗装路がコースに組み込まれるのは非常にまれだ。
≪闘志引き立てるブルターニュの大地≫
「地の果て」と呼ばれるブルターニュ地方は、その名のとおり、フランスの西端に位置している。レースが開催されるラニリまではパリから約600キロメートルあり、車を走らせていると途中から高速道路も途切れてしまう。多くの人が持つであろうフランスのイメージとは少し違っている。