石造りの白い家々がひっそりと集まる小さな街々、かつてイギリスから伝わった古代ケルト文化が今も人々の生活のなかに色濃く残り、フランス語だけでなくブルトン語という独自言語もわずかではあるが使われている。天気の悪さも有名で、曇りや雨の日が多く、夏でも肌寒い。
そんな独特な雰囲気が漂う春のブルターニュに、悪路を行く「トロ・ブロ・レオン」はよく似合う。未舗装路を走るのはプロ選手にとっても容易なことではない。パンクなどのトラブルが頻発し、勝つためには実力や精神力だけでなく運も必要だ。
特別な対策が施された自転車を使っても悪路を走る振動で、手の皮がむけてしまう選手もいるという。それでも選手たちは自転車選手としての誇りと、勝利を目指す貪欲な気持ちをもってゴールを目指す。どこかもの悲しく神秘的なブルターニュの大地が、選手たちのギラリとした闘志を引き立て、それがレースの大きな魅力となっている。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子/SANKEI EXPRESS)
■たなか・そのこ 1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。08年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかな自転車レースを追っかけ中。