金第1書記には、スポーツ、中でもとりわけバスケットボールとサッカーを、対米、対韓外交のカードにしようとの思惑があるとされる。外務省をバスケットボールの、対韓工作を進める党統一戦線部をサッカーの後援機関にそれぞれ指定し、党や政府の各部署にこの2競技を支援するよう命じているのもその表れだ。サッカーは南北ともに一番人気のあるスポーツである。
一方、バスケットボールは言わずと知れた米国の人気スポーツで、金第1書記が子供時代から最も好んだ競技であるとともに、バラク・オバマ米大統領(52)も熱烈なバスケ愛好家として知られる。
北朝鮮がロッドマン氏に“白羽の矢”を立てたのは、オバマ氏が1990年代後半にロッドマン氏が所属していた「シカゴ・ブルズ」の大ファンであることが理由とも指摘されている。
世論は冷ややか
だが、「北通い」を続けるロッドマン氏に対する米世論は冷ややかだ。ブッシュ前政権の高官でジョージタウン大のビクター・チャ教授は20日のCNNテレビの番組で、「ロッドマン氏とセットなら金正恩氏は西側メディアから破格の注目を集めることができ、体制が揺らいでいないことを効果的に宣伝できる。さらに強硬路線転換への批判を回避し、米国などの融和策を引き出そうという金正恩政権の思いもちらつき、ロッドマン氏は利用されている」と分析した。
また、19日付の有力紙ワシントン・ポストは、北朝鮮の政治犯収容所で生まれて22歳のころに脱出した申(シン)東赫(ドンヒョク)氏(31)の投稿を掲載。申氏は「独裁者との時間を楽しむときに、ロッドマン氏は彼やその一家がやってきたことに思いをはせてほしい。極端な残忍さだけがその特徴だ」と訴えた。
「バスケ外交」は、ウマがあうロッドマン氏と金第1書記の「二人よがり」なのか。