でも、強い言葉を口にしても相手に思いを受け取ってもらえる、そんな島の人同士の信頼感が、酒場の軽口には表れているような気がします。
幼いころから私のすぐそばには島唄がありました。島唄は島の誰かの人生の苦や楽を唄にしています。だからでしょうか。島唄のなかには、人を思う気持ちや、方言のなかにあるきれいな言葉が詰まっていて、唄いながら感動することがあります。どの唄も口伝いに、代々歌い継がれてきたものです。
たとえば感謝の気持ち。奄美は一つ一つの集落を峠が隔てていて、昔は隣の集落に行くにも本当に遠かった。もちろん車なんてない。「この峠を越えて、来てくれた人の思いほど、本当の思いはない」と島唄で歌い継がれているのは、そんな骨折りへの感謝の気持ちがあったからです。「人と人の縁は不思議だけれど、これはきっと神様が引き合わせてくれた」というような唄もあります。感謝や人を尊ぶ心…そうした気持ちが言葉と結びついて生まれた島唄の歌詞は、本当に美しいな、って思います。