新春の陽光。澄み切った青空が広がる。法華経寺(千葉県市川市中山)。朱色の五重塔がすっくと建つ。見事だ。わたしは境内の奥へと進んでいった。目指す日蓮宗大荒行堂に着いた。
壁越しに読経する声が響いてくる。俗世と隔たれた壁の向こう。姿は見えないが、修行僧たちが伝統の寒百日大荒行に取り組んでいるのだ。
「行堂清規」が掲げられている。修行僧たちが守るべき規範である。主なものを記す。
──在行中はすべて伝師の命に服従すべし。日課の読経並びに水行など怠ることを許さず。飲酒喫煙することを許さず。不浄食を許さず。寂黙を守る。清規を乱す者は直ちに退堂を命ずる。
水行とは、寒中、冷水を浴びて身を清める行だ。午前3時、6時、9時、正午、午後3時、6時、午後11時-の1日7回と厳格に定められている。よって睡眠時間はわずかしかない。食事は1日2回。白粥が主という。
大荒行堂の壁。修行僧の名前と寺、地域が黒々と記されていた。首都圏や青森県、長崎県…。全国から集まっていることがわかる。名前をひとりずつ追っていった。驚いた。わたしと縁のある若い僧の名があるではないか。