2013年9月、テレビ番組の仕事で9日間かけて富士山登頂に挑んだ。浅間神社で手を合わせ、御殿場口に立ったとき、足下は黒い溶岩の砂利だらけ。粒子にズッポリ足を埋めると、一歩一歩が重い。ちょうど台風が日本列島を襲っていた時期で、天候がめまぐるしく変わる。目の前で雲が生まれ、さっきまでの青空が3分後には真っ白に。雲の影が山肌にくっきり映り、あっという間に流れて行く。それが時として魔物にも見え、気持ち一つで富士山が楽しいものにも、怖いものにも変化し、心が揺さぶられてしまう。
≪また登りたくなる魔性の存在≫
富士山を望む宿に泊まり、毎日3000メートル地点までを往復していたが、とうとう3000メートル地点の山小屋に待機し、嵐が去るタイミングを見計らい、山頂にアタックすることになった。
どんなにチェックしても、気象庁のデータは通用しない。ヘッドライトの明かりを頼りに山頂を目指す。富士山は常に、「どうだ、登ってこい」と上から目線で見下ろしているのだ。なかなか手強(てごわ)い。山頂へ辿(たど)り着いた瞬間、振り向きざまの景色をファインダーに収めた。僕はこのとき、宇宙が撮れたとさえ思った。