うまくいかなかった日の稽古後は「一人、台本を手に居酒屋のカウンターで刺し身や焼き鳥をつまみながら、ページをめくる」という、元AKB48の秋元才加(さやか)さん(鴨川一也撮影)【拡大】
流れ詰まらせ、はがゆい
登場するのは、エルザともう1人をのぞいて、ドイツ史に名が残る実在した人物。秋元は、エルザを演じるにあたり、三谷から「観客に一番近い気持ちでいて」と言われた。ゲッベルズ邸にやってきた面々を見て、エルザが「女優のツァラ・レアンダーだ!」と驚けば、それが有名な人物だと伝わり、観客をいっそう物語の奥へ、奥へと引き込んでいけるからだ。
その役目を果たすには、テンポのよいこの会話劇の波を乗りこなさねばならない。「時々、私が流れを詰まらせていると分かり、はがゆい時もあります。なのに、これが正解という手本もなく、初演をまねてもいけない。場面ごとにエルザがどんな気持ちになり、どう振る舞うのか。まず私が決めて動かないといけないんです」。決められた立ち位置で、手本通りに踊れば正解にたどりつけたAKB時代の仕事とは、大きく違う、という。
今は寝ても覚めても、頭の中は芝居のことばかり。取材前日の夜は、ナイフを持った共演俳優に追い回される夢を見た。化粧をする時間も惜しいといい、稽古期間中は寝起きのぼさぼさ頭にジャージーとリュックサック姿で稽古場に通った。