映像にはしんみりとした雰囲気はみじんもなく、むしろ、どこかポップで、明るく、ロールプレーイングゲームを楽しんでいるかのような気持ちにすらさせてくれる。太田監督は「登場人物の顔にぼかしが施されず、映像に陰惨さが感じられないことが大きな要因でしょう。日本の施設で同様の取材をすれば、まず顔の映像はぼかしだらけになってしまうでしょう」と説明してくれた。また、本作の構成担当で、「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)で助監督を務めたロジャー・パルバースの強い主張によるところが大きいともいう。「彼は『この映画は、認知症の彼女たちがかつての自分の輝きを取り戻していく物語』と捉えているから、彼女たちの青春時代にかかっていた音楽をかけるべきだというんです」。ドキュメンタリーに余計な音楽を入れないという教育を受けた太田監督は、戸惑いながらも思い切って受け入れた。