「自分が有色人種であることが自分の仕事に対して何らかの影響を与えていると思う」というスティーブ・マックイーン監督=2014年2月11日、米カリフォルニア州ロサンゼルス(C)Kaori_Suzuki【拡大】
実際、この1年間を駆け足で振り返っただけでも、リー・ダニエルズ監督(54)の「大統領の執事の涙」(公開中)、ライアン・クーグラー監督(27)の「フルートベール駅で」(3月21日公開)といった、白人から不当な扱いを受けた黒人たちの悲しみや怒りを描いた作品が世界の映画祭で話題となっている。マックイーン監督は幼少時を過ごした英国で差別に苦しんだ経験があったことを明かし、「僕が学校に通っているころ、そういう時があったと思うよ。イエスです。でも今はない。でも…。別の質問に移ろう」とのためらいがちな様子から、複雑な思いが透けて見えた。
観客を困難な状況に
作品の語り口はといえば、2時間14分をかけてソロモンという黒人の苦難の歴史を時系列でたどっていくというお行儀のいいものではない。マックイーン監督は、社会正義といったものが、いかに薄っぺらで、時代によって解釈が一変してしまうものかを突きつけた。具体的には、撮りためた映像素材の編集では「作品の冒頭から観客たちを困難な状況に置きたかったから、いきなり観客を奴隷制度の中にほうり込むようにしたんだ」と振り返った。