亮輔の父、母、祖父、果ては希恵の両親まで。一人一人の出自にまでさかのぼり、小説第1作とは思えない筆力で、登場人物に存在感を与えた。「後で言われて気づいたんですけど、ここまで書かなくてよかったのかな(笑)。でも、書いている当時は『そこまで説明しないと、この人の由来分からないじゃない』と…。私にとっては、どの登場人物も等価。交差点を通り過ぎる人物たちを書いているようなイメージです」
歴史の解説本などのライター・編集者として、約20年のキャリアを持つ。「ライターだと嘘は書けないじゃないですか。戦国時代のあの謎はこうだったとか(笑)。反対方向に行ってみたいという思いはありましたね」
父の死から今年で4年。「作品に書いたからでしょうか。いつまでも、父親が死んだという気がしないんです」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■すおう・やなぎ 1964年東京都生まれ。5歳から広島県、山口県で育つ。早稲田大学卒業後、編集者・ライターに。2013年「八月の青い蝶」(「翅と虫ピン」を改題)で第26回小説すばる新人賞を受賞。
「八月の青い蝶」(周防柳著/集英社、1470円)