効果はわずかにあった。リスは警戒しながらも姿を見せてくれるようになった。1時間に1度ほどであるが…。
我ながらよくやったと思う。あの寒気の中、安価な防寒着で雪上に座り、来るとも知れないシャッターチャンスをひたすら待つとは。ただ不思議と辛抱しているという意識はなかった。プロの写真家でもないのに「撮りたい」という想いだけはほどほどにあったのだろう。
20年経った今でも、やっていることは基本的に変わっていない。独り原野でチャンスを待ち続ける-。行動範囲が森の一点からアラスカ全土に広がり、撮影期間も数時間から数カ月に延びはしたが、「撮りたい」という熱はあの頃のままのようである。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS)
■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退後、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。2004年夏、マッキンリー山登頂。著書に「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー「アラスカ・フォトライブ」を開催。matsumotonorio.com