時間かけて主役探し
心優しいファイがソクテからターゲットの殺害を強要され、半狂乱となって実行に及ぶ場面は、思わず目を背けたくなるほど過酷で残忍なものだ。「複雑な感情線を持った青年でなければファイを演じられない。心身が健康でなければ演じた俳優が挫折するリスクもありました。私は韓国で活躍するティーンの俳優のほぼ全員に会い、時間をかけて適任者を探しました」とチャン監督。子役出身だが感情表現に透明感があり、それでいて深みや奥行きも感じさせたのがジングだった。彼は本作で韓国の二大映画賞の一つ、青龍映画賞で新人男優賞を勝ち取った。
ソクテ役については、脚色の段階から真っ先にユンソクの顔が浮かんだ。「父親とか、集団のリーダーのイメージを思い浮かべると、ぴったりくるのがユンソクです」。とはいっても、ユンソクは出演の打診に「重く、深い人物だ。この人物を演じきらねばならないという重圧に耐えられるか自信がない」と尻込みし、一度は丁重に断ったという。その後も続くチャン監督の粘り腰に「なかなか出会えないキャラクターだから挑戦したい」と折れ、出演を承諾したそうだ。