「最初はなんでそうなるのか、全然理解できず、違和感しかなかった」と八乙女。なぜ隣人を殺すのか。なぜ稔は「俺がやる」と拳銃を手に取るのか…。稔と、炭坑夫だった40年前の国男を演じる八乙女は、実際の事件の記録や、炭鉱の盛衰に関する本などの資料をあたり、国男一家の暮らしに深く想像をめぐらせた。すると「体から役がにじみ出てくるようになってきた」という。
よみがえる金八時代
「何かの拍子に心の糸が切れたら、ぶわっと泣いてしまうような、そんな境遇を生きる人たち。命がけで炭鉱で働いたのにこのありさまという国男のやるせなさや怒り。稔も、本心では『俺は殺(や)りたくない』って叫びたいと思う。踏み違えたら崩壊する2人の人生の“一歩の重さ”を感じながら演じています」
毎日稽古に夢中だ。赤堀の脚本では、何げない日常の振る舞いを演じるのが特に難しいと感じているが「稽古場では西岡さんや大倉さんからアドバイスをもらったり、荻野目さんも立ち話しながら一緒に考えてくださったり。毎日が勉強で新しく吸収することだらけ」と充実している。