8月末。北極圏はもう秋だ。見渡す限りの原野が紅葉の大海と化す。燃え盛る大地は絶える寸前のろうそくの炎のよう。山頂は新雪で覆われ、長い冬のおとずれを告げている。あまりの辺境性ゆえ、この絶景を目にする人はほとんどいない。
北米大陸最高峰・マッキンリー山(6168メートル)。朝日が山頂を染め、山に生命が吹き込まれてゆく。眼下に広がる氷河には、太古の昔からの悠久の時が刻まれている。
150年前と変わらぬ風景。それは奇跡などではなく、アラスカの日常なのである。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS)
■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退後、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。2004年夏、マッキンリー山登頂。著書に「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー「アラスカ・フォトライブ」を開催。matsumotonorio.com