「フライングダッチマン(空飛ぶオランダ人)」と呼ばれたのは、1974年西独大会の英雄ヨハン・クライフだった。ファンペルシーの美しいダイブは、空飛ぶオランダ人2世と呼ぶにふさわしい。
呆然(ぼうぜん)と振り返るGKカシリャスは最強スペインの象徴だった。長く主将を務めた彼の頭頂部は雨にぬれて地肌が透け、うなだれる姿には老いを感じた。世界の中盤を制してきたシャビもイニエスタも輝きを失い、王国凋落(ちょうらく)を強く印象づけた。
スペインの老いを引き出したのはオランダの戦術である。世界で最も魅力的な攻撃サッカーと評価された伝統をかなぐり捨て、強敵をリスペクトして5バックの超守備的布陣を敷いた。パスサッカーが身上のスペインは引き込まれるように前がかりになり、後方に広がる広大な敵陣をファンペルシーやロッベンという天才、怪物が存分に走り回った。
圧巻は、ロッベンの独走だった。スナイデルが放り込んだロングパスをロッベンは、DFセルヒオラモスの後方から追った。100メートル10秒台の快足で抜き去ってのゴール。結果は5-1。超守備的戦術が大量点を生むのだから、サッカーは面白い。