まず香取のダニー・オーシャン(映画版ではジョージ・クルーニー)が現れた。服役を終え、囚人服を脱ぎ捨てると、襟を立て、胸ボタンも開けた白シャツ姿でちょい悪男を想起させるダンスを披露。抜群の存在感。力みのない、大人の男の色気を見せつける。そんなダニーに愛想を尽かし、ラスベガスで心機一転、スター歌手を目指す妻、テス(映画版ではジュリア・ロバーツ)を演じる観月は、歌声は涼やか、ただ居るだけで美しい。
特筆すべきは、オーシャンの右腕、ラスティー役(映画版ではブラッド・ピット)の山本耕史(37)の存在だろう。香取を支える山本という構図は、04年の大河ドラマ「新選組!」の近藤勇(いさみ)&土方歳三(ひじかた としぞう)コンビを彷彿(ほうふつ)させる。ファン待望の相棒像がかなった。
舞台経験豊富な山本は、キレのあるダンスとセクシーな歌声はもちろん、コミカルにおどけたりと、演技の幅広さを見せる。八面六臂(はちめんろっぴ)の働きでオーシャンを支えるラスティーの姿はそのまま、香取と作品を盛り立てようとの山本の意気込みを伝えてくるようだった。
宙吊りあり、イリュージョンありとエンターテインメントの要素が豊富。最後まで飽きさせない。10月下旬、梅田芸術劇場でも上演予定。問い合わせはキョードー東京(電)0570・550・799。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)