イスラエル・首都エルサレム。イスラエル・ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区とパレスチナ自治区ガザ地区【拡大】
思い出したのが、イスラエル訪問中に会った政府高官の一言だ。
「ドームが重要なのは、軍事面に加え、政治的な効用があることだ」
ハマスの攻撃でイスラエル側にも死者が出て、国内では強硬派を中心に、ガザへの地上作戦の決行を政府に求める声が強まった。しかし、2008年暮れから約3週間にわたり行われたガザ進攻作戦では、パレスチナ住民ら千人以上が死亡。細い路地が入り組んだガザでの市街戦は、民間人を巻き込む恐れが高い一方、ハマスに決定的な打撃を与えることは難しい。米国を除き、国際世論の逆風も必至だ。
その意味で、11年からアイアンドームの配備が始まり、イスラエル側の犠牲を食い止めてきたことで、ネタニヤフ政権は今回、ハマスの挑発に乗る形で地上作戦に引きずり込まれる事態を避けつつ、次の一手を慎重に見極める時間を稼ぐことができたはずだ。
その上でイスラエルは7月17日、ガザ進攻に踏み切った。ネタニヤフ政権にどのような成算があるかはわからないが、「熟慮」の末の決断が、さらなる流血の拡大に向かわぬよう祈らずにはいられない。(黒瀬悦成/SANKEI EXPRESS)