【佐藤優の地球を斬る】
今月(6月)下旬、中東某国から親しくしている知人が数人、来日した。その中には、中東情勢、サイバーインテリジェンス、武器取引の専門家がいたので、踏み込んだ意見交換をすることができた。いずれの専門家も「中東情勢が大きく変化している」という認識を共有していた。専門家たちから聞いた話のうち興味深い部分を記しておく。
イランとの提携に傾く
<イラクで攻勢を強めている「イラクとシリアのイスラーム国」(ISIS)については、スンニ派住民の心をつかんでいる。もっともイラクのマリキ首相は、最初からスンニ派住民を同胞とみなしていない。それだから、スンニ派地域がISISの支配下に置かれても、そのまま放置することになる。マリキ首相は、自らの出身母体であるシーア派(十二イマーム派)住民の擁護と首都バグダッドの防衛だけを考えている。このような「選択と集中」が功を奏して、マリキ政権はバグダッドを防衛することができる。ISISがバグダッドを占領し、イラクに新政権を樹立する可能性はない>