イベントは恵比寿ガーデンプレイスの開業20周年を記念して行われている。2007年から、ガーデンプレイスのブランドメッセージ「恵比寿。あなたは、大人の街になれ。」に沿って、紫舟氏は家族や友人、恋人に向けた思いを1メートルを超える大きな和紙に筆で書かせるワークショップを続けてきた。
紫舟氏は、今回のイベントについて、「ファンタジーな世界をかまくらのようなイメージで実現したかった」と話す。かまくらの祭りでは、「天筆」という書を書く伝統文化もある。ドームでは「文字が(立体として)360度から鑑賞できる。すてきな日本語をたくさん浴びてほしい」。
立体から平面へ 失われた力
根底にあるのは、文字の“立体化”というこだわりだ。紫舟氏によれば、文字(漢字)はもともと、牛の骨や亀の甲羅に刻まれた「立体」だった。その後、紙に書かれる時代が長くなって、2次元の表現が一般化したが、「その分、力を失った」。文字を彫刻や3D画像にすることで「立体化」し、失われた「言葉の力」を取り戻すことに主眼がある。
平面に書くという表現では、日本語の壁があり、「世界に通用するレベルに届かない」。文字を立体化することで、その形や影で、文字に込められた意味や感情を伝えていくという。こうした試みは注目され、今年12月にはルーブル美術館で書の彫刻やびょうぶが展示されることになった。