手が震えて物がうまくつかめない、明瞭に話せないといったいくつかの課題があり、初めは工藤さんの家族も、「ウエートレスなんて無理」と思っていた。けれども、工藤さんは、竹ノ内さんの助けを借りながら、厳しい条件のレストランで、3年8カ月働き続けた。
工藤さんの頑張りに感動した竹ノ内さんは、「継続して働けるレストランをつくりたい」と思い立つ。調理長に東京會舘出身の尾原寛さんを迎え、2009年、アンシェーヌ藍を開店した。
店では接客、調理補助、開店準備、清掃などさまざまな仕事を、障がいをもつスタッフが担当している。料理はおいしく、あたたかい接客も心地よい。
ここまでくるのに決して順風満帆ではなかったという。シェフの尾原さんは、「機敏性や判断力が求められる仕事。苦手な人もいて、なかなかうまくいかなかった」と話す。けれども5年間かけてスタッフはゆっくり成長してきたと振り返る。「僕自身もゆっくり待てるようになり、気持ちがやさしくなった」
13年には、「お菓子を作りたい」という従業員のMさんの夢をかなえるために、製菓部門「メゾン・ドゥ・藍」もオープン。藍を練りこんだクッキーやお米のパスタなど、オリジナル商品も扱う。