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【軍事情勢】欧露各軍と博物館の血塗られた関係 (3/3ページ)

2014.8.17 14:33

ウクライナ東部のマレーシア航空機墜落現場で、残骸から見つかった人形を持つ親露派兵士。掠奪が行われたケースもあったとすれば、それは受け継がれたロシア軍の「血」である=7月18日(AP)

ウクライナ東部のマレーシア航空機墜落現場で、残骸から見つかった人形を持つ親露派兵士。掠奪が行われたケースもあったとすれば、それは受け継がれたロシア軍の「血」である=7月18日(AP)【拡大】

  • SANKEI_EXPRESS__2014(平成26)年8月17日付EX(8面)

 ◆文化遺産を守護した日本

 実は、帝國陸軍も大蔵省に収蔵されていた莫大な量の銀と政府蔵の米・食糧だけは「整然と」鹵獲している。ただし、ハーグ陸戦条約・規則に照らして完全に合法だった。規則第53条は《一地方を占領した軍は、国の所有に属する現金、基金及び有価証券、貯蔵兵器、輸送材料、在庫品及び糧秣その他すべての作戦行動に役立つ国有財産のほかは、これを押収することができない》とされている。

 一方、46条は《私有財産は没収できない》、47条は《掠奪は厳禁》。56条は《市区町村の財産ならびに国に属するものといえども宗教、慈善、教育、技芸及び学術の用途に提供される建設物は私有財産と同様に取り扱うこと。前述のような建設物、歴史上の記念建造物、技芸及び学術上の製作品を故意に押収、破壊または毀損することはすべて禁止され、かつ訴追されるべきものとする》と定める。

 将兵個人はもとより、主体が部隊であろうと宝物や芸術品などは国有・私有にかかわらず掠奪してはならぬと断じている。従って、条約調印国の仏露独英など欧露各軍が行った掠奪行為は明らかな国際法違法となる。尚、帝國陸軍の一部高級軍人が銀を横領したと強調したがる向きがあるが、こちらは帝國陸軍内の軍律の問題である。

 むしろ、世界的文化遺産を守護した帝國陸海軍の本質こそ正視し評価すべき。北清事変では北京陥落翌日、王宮の本丸=紫禁城(故宮)の3門を押え、1門を占領した米軍と共に掠奪と破壊を防いだ。

 折しも、国共内戦勃発で1948年、国民党が台湾に避難させた文化財を展示する台北・故宮博物院展が日本で開かれている。しかし、仏露独英軍が故宮の門警備を担任していたら、大英博物館展など、それぞれ母国の博物館名を冠にした展覧会になっていたやもしれぬ。実際、欧露の博物館には、アジアなどで掠奪したおびただしい数の文化財が並ぶ。ベルリンの博物館も、北清事変でドイツ兵が天文台より奪取した有名な地球儀を展示し、物議を醸している。

 ところで、中国の団体が今月、1908年に日本軍が奪った?文化財返還を要求してきた。真っ先に返還要求するべき欧露各博物館の膨大な収蔵目録を、中国に送り付けたくなる。(政治部専門委員 野口裕之)

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