「天才少年と騒がれ、いろいろな場所で演奏しました。可能性が与えられたと錯覚していました。しかし、人が思うほど才能がないのではないか、という恐怖心をずっと持っていました。国際コンクールでは一度も1位を取っていません。若いときは、コンクールに通った人の演奏を、ここはいいけどここはだめ、などと批判していましたが、今ではそれだけの才能があると思うようになりました。私はただ向上心を持って練習を重ねました」
奔放と謙虚、知性
今回リリースされたCDもそうだが、録音はバッハを中心に行っている。「ゴルトベルク変奏曲」の録音は映像も含めて他のレーベルに3種類あり、ソニーからは「フランス組曲」全曲もリリースしている。今回のアルバムは、ファツィオリのピアノで録音したことも特徴のひとつ。
「バッハのポリフォニーの完成度の高さは素晴らしい。作曲家の指示が少ないので演奏者が自由に解釈できます。練習して弾けば弾くほど好きになります。ゴルトベルクを3度録音しているのは、おのずと考え方やアイデアが変わってくるので実験をしたいのです。ファツィオリはバロックには合うと思います。ちなみにデッカへのベリオ作品集の録音はヤマハでしました。バッハをピアノで録音するのは、現代のピアノだからできることを最大限に生かすためです」