スーツにネクタイ姿のパンクロック、ドレス姿のヒップホップ…。そんなアーティストがいたら、なんだか違和感を覚えますよね?ファッションと音楽が密接な証拠です。どちらも時代を、流行を良く反映する文化だからなのでしょう。
ところが最近、着ているものでその音楽性を推測できないようになってきました。スーツ姿で激しくシャウトするパンクロック・バンドが登場してもおかしくないような状況に変容してきている気がします。ファッションと音楽が細分化され、それが再構築され、ミクスチャーされる時代。例えて言えば、文化的な遺伝子組み換えが進んでいて、ひとつひとつの音楽にラベルを付けて、ジャンル別に棚に並べることが困難になっているのです。
だからといって、ファッションと音楽の距離が遠くなったということではありません。その2つはあらゆる意味で、より複雑に絡みあっているように感じます。ですから、「こういうファッションにはこういう音楽だよね」という方程式が完全に崩壊しました。われわれラジオ局で選曲を生業にしている者にとっては難しい時代になりましたが、逆にファッションに対して音楽を提案していく醍醐(だいご)味は増えたと思います。