iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った網膜の細胞の世界初の移植手術を終え、記者会見する理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダー(左)ら=2014年9月12日、兵庫県神戸市中央区(共同)【拡大】
≪安全性の調査が主な目的≫
今回の移植手術は、安全性を調べることを主な目的とする研究の一環であり、成果の確認はこれからだ。研究を主導する理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは「普通の治療になるには10年以上かかる」との見方を示している。
高橋さんらはiPS細胞から作った細胞をマウスに移植する動物実験を繰り返し、腫瘍ができないことを確認してきた。しかし移植した組織が炎症を起こさないか、患者の体内で意図しない増殖をしないか、人間の患者で確かめなければ治療に結びつかない。症例の蓄積と丁寧な追跡、情報公開が重要となる。
今後は、視力回復が可能か、どんな患者なら効果が見込めるかといった評価のほか、組織の中にもともとある幹細胞を使った別の手法による再生医療と比べた安定性、費用面の検証も必須だ。
手術を担当した栗本康夫医師は12日の記者会見で「名人芸が必要な手術ではいけない」と指摘した。網膜の出血や剥離の危険性がある難易度の高い手術、扱いの難しい細胞シートなど、医療として普及する技術になるには、まだ改善点は多い。(SANKEI EXPRESS)