秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)【拡大】
けれども、一つだけ厳然たる事実が存在します。薬剤は、体を良くすることに到底かなわないというものです。最近の薬剤は性能が良くなり、合併症のリスクを最大20%低下させてくれます。ところが、高血圧や糖尿病になると数十年後に脳卒中を起こすリスクは何倍にも跳ね上がります。薬剤できちんと加療すれば何もしないよりもリスクが下がるのでその意味は大きいものの、薬剤の効果がかすんでしまいます。
10月の臨床栄養学会で、管理栄養士さんが食事を管理して回復された患者さんの報告をいたしました。さらに、その後の公開講座では、栄養管理が与える経済的インパクトやエキスパート管理栄養士である「専門栄養相談士」の存在意義についてシンポジストの一人として発表させていただきました。
熱心に栄養管理を行ったある患者さんは、高血圧、高脂血症、糖尿病から徐々に離脱し、今では何も内服しなくても正常値になりました。高価な薬剤を用いなくても、身近な食事の工夫とお金のかからない運動で、メタボリック症候群から離脱してリスクを下げることができます。みんなが健康になることが医療費の抑制につながると、私は考えています。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔(SANKEI EXPRESS)